ATX3.0およびATX3.1電源は必須ではありません。にも拘わらず必ずATX3.1電源を買うべき理由は、安全性・信頼性の違いです。
12VHPWRではなく12V-2x6ケーブルが安全・安心
12VHPWRと12V-2x6は相互互換性がありますが、12VHPWRではなく12V-2x6ケーブルが安全・安心です。
RTX 4090時代の12VHPWRに発火や融解といった不具合が報告されていました。主な原因として、コネクタの不完全な挿入が指摘されており、しっかりと奥まで差し込むことで問題を回避できるとされています。
しかし、完全に挿入していても長期間の使用で問題が発生するケースも報告されています。根本的な解決をすべくPCI-SIGは12VHPWRコネクタの仕様を見直し、新たに12V-2x6コネクタが開発されました。
よって12VHPWRと12V-2x6コネクタは、相互互換性はあるものの未然に発火や融解といった不具合が発生する可能性をゼロにするためにも、ATX3.1電源は導入すべきと言えます。
近年のハイエンドGPUの登場により、瞬間的に定格電力を大幅に上回る電力(いわゆる「電力スパイク」)が発生することが問題となりました。これに対応するため、ATX 3.0規格では、PCIe電源の最大3倍、システム全体の2倍のスパイクに対応することが求められています。
ただ、これだけの問題であれば、グラフィックカード付属の4 x 8-pin-to-12V-2x6 cableで回避できますが、見た目がもっさりになる欠点があります。
また、ATX3.0以前なら電源から直接12V-2x6に変換するケーブルでスマートに対応できます。別売りでありメーカーごとに配線が違います。違うと最悪発火する恐れもあるため確実に選ぶ必要があります。
電力スパイク対応
近年のハイエンドGPUの登場により、瞬間的に定格電力を大幅に上回る電力(いわゆる「電力スパイク」)が発生することが問題となりました。これに対応するため、ATX 3.0規格では、PCIe電源の最大3倍、システム全体の2倍のスパイクに対応することが求められています。
ATX 3.0規格の導入により、電源ユニットはこれらの高負荷要求に対応できるよう設計が進化しました。これにより、最新のハイエンドGPUを安定して動作させるためには、ATX 3.0対応の電源ユニットの使用が推奨されるようになっています。
ATX 3.1とは本的なスパイク対応の考え方はATX 3.0から大きく変わっていませんが以下の違いがあります。
電力管理の向上: ATX 3.1では、150Wと0Wの電力レベルを維持するセンスピンに新しい電力管理設定が実装されています。これにより、全体的な電源管理が改善されました。
ホールドアップ時間の短縮: ATX 3.1のホールドアップ時間は16msとなり、ATX 3.0の17msから短縮されました。この変更により、電源ユニット(PSU)の効率がわずかに向上しています。
CPU別推奨電源容量
GeForce RTX 5090は、単体で最大575Wです。RTX 5090なら以下の例からCPUのTDP120W以上になると思われます。このことからおのずと1200W電源が必要です。もし、TDP65W CPUを使うなら1000Wもありえますが、そんな方は稀なことでしょう。
CPU | CPU消費電力 | 合計消費電力目安 | 推奨電源容量 |
---|---|---|---|
Ryzen 5 9600X (65W) | 65W | 約715W | 1000W~1200W |
Intel Core Ultra 7 265K (125W) | 125W | 約775W | 1200W |
Ryzen 7 7800X3D (120W) | 120W | 約770W | 1200W |
Ryzen 7 9800X3D (120W) | 120W | 約770W | 1200W |
Ryzen 9 9950X (170W) | 170W | 約820W | 1200W |
電源ユニットの品質も重要で、「80 PLUS Gold」以上の認証を持つ製品を選択すると、電力変換効率が高く、システムの安定性と省エネ性能が向上します。
- ATX 3.1
- 80 PLUS Gold以上
- 1200W
以上を満たす電源の例。下の各ショップをクリックして探してみてください。
ATX3.0より前の電源が余っているなら
ATX3.0およびATX3.1は、必須ではありません。既にATX電源を持っている方はそのまま使うことも可能です。その際にビデオカード付属の4x 8-pin-to-12V-2x6 cableを使う選択もありますが、みっともないのでGen5に変換するコネクタを別途購入してスッキリ配線で使うことも可能です。旧電源を既にもっている方は、私のように変換コネクタを購入しスッキリ配線にした方が良いかもしれません。とはいえトラブルを未然に防ぐにはATX3.1電源が望ましいです。

これから電源を買うなら
今なら普通にATX3.1電源が売っています。RTX 4090発売時はATX3.0電源がほとんどなく苦労したのですが、今ならRTX 5090発売当初からATX3.1電源が手に入ります。
RTX 4090発売時の最新電源がATX 3.0でRTX 5090発売時の最新電源がATX 3.1です。
例えば上記PC電源や下記PC電源を買えば12V-2x6 ケーブルが付属しているので解決です。
GeForce RTX 5090を使用する際にNVIDIAは最低でも1000Wの電源ユニットを推奨しています。推奨電源は、各メーカーのグラフィックカードに明記されています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 5090 SOLIDは、1000W以上が推奨です。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 5090 AMP Extreme INFINITYも同様に1000Wです。
ZOTACの場合、RTX 5080は850W以上推奨です。
RTX 5090は新しい12V-2x6電源コネクタを採用していますが、従来の12VHPWRコネクタとも互換性があります。よって電源がCORSAIRの場合で旧ATX電源の場合(ATX3.0より古い)には、以下の電源で接続することも可能です。
グラフィックカードへ給電するコネクタの種類
4 x 8-pin
RTX 3000シリーズおよびRTX 4000シリーズの中堅以下の電源は、PC電源から取り出しPC電源側1本のケーブルから2本の8ピンケーブルを取り出します。もし、RTX 4090 / RTX 5090のような上位グレードで使う場合には、PC電源から2本取り出し、その先は4本になります。
その4本をさらにグラフィックカードに付属する変換コネクタを使って12VHPWRや12V-2x6にします。
8ピンコネクタは最大150W給電。余談ですが6ピンで使うと最大75W給電です。
GeForce RTX 5090の消費電力は最大575Wのため、8ピンコネクタが4本ないと供給できません。
余談ですが、GeForce RTX 4090グラフィックスカードの消費電力は450Wとされており、余裕をもつためRTX 5090と同じく、8ピンコネクタが4本必要です。
12VHPWR
12VHPWRは、スマートな電源コネクタで600Wまで供給できます。発売当時はコネクタが溶けてしまうトラブルがあり原因は接続不良(差し込みが甘いため)と言われています。
12V-2x6
12V-2x6は、12VHPWRと互換性があり似ていますが、12VHPWRにて発生したトラブルが発生しないように改善されています。
12VHPWRコネクタと12V-2x6コネクタの違い
互換性があっても12V-2x6の方がいいです。12V-2x6の方が信頼性が高いからです。
オリジナルの12VHPWRコネクターと比較して、新しい12V-2x6コネクターは、導体端子が1.5mm長い一方で、検出ピンがわずかに(0.25mm)短いです。わずかな違いですが電源ケーブルがシステムの電源から電力を引き出そうとしているどのようなデバイスにも適切に接続されていることを確認するために重要です。
すでに12VHPWR用のハードウェアを持っている場合、既存の12VHPWRケーブルとアダプターは、新しい12V-2x6コネクターで動作します。すでに持っているケーブルも問題なく使用できます。これから準備するなら信頼性が高い「12V-2x6コネクタ」を購入した方が安心かもしれません。
600W PCIe 5.0 12V-2x6 Type-4 PSU Power Cable
まだ、Amazonにも販売されていません。12VHPWRでしのぐしかありません。
12V-2x6にあって12VHPWRにない機能
- 安全性の向上:12V-2x6コネクターは、半刺し状態で長時間高電力を流しても問題が発生しにくくなっています。実験では、約640Wの電力を50分以上流し続けても、最高温度が41℃程度に抑えられ、溶損のリスクが大幅に低減されています。
- 改良された検出ピン:12V-2x6コネクターには、接続の正確さを監視する改良された検出ピンがあります。問題が検出された場合、コネクターは自動的に電流の流れを制限し、グラフィックスカードの過熱と損傷を防ぎます。
- 電力供給の制御:12V-2x6では、ピン0/1が解放状態の場合、電力供給が行われません。これに対し、12VHPWRでは解放状態で最大150Wの電力が流れていました。12V-2x6では、ピン0/1両方が短絡状態になって初めて150Wが供給されるように設定が変更されています。
- ケーブル損傷防止ガイドライン:12V-2x6では、コネクター直後のケーブルの扱いに関するガイドラインが追加されました。これにより、ケーブルやコネクターにかかる負荷が軽減され、異常発熱などのリスクが低減されています。
- 厳格化された試験条件:12V-2x6では、複数回の抜き差しや物理的な負荷をかけた後の抵抗値変動チェックなど、より厳しい試験条件が設定されています。また、高温耐性に関する要件も強化されており、長時間の高温環境下での信頼性が向上しています。
ATX 3.1にはあってATX 3.0にはない機能
- 12V-2x6コネクター:
ATX 3.1では、ATX 3.0で導入された12VHPWRコネクターに代わって、新しい12V-2x6コネクターが採用されました。この新しいコネクターは、以前の設計の問題に対処するために改良されています。 - 電力管理の改善:
ATX 3.1では、150Wと0Wの電力レベルを維持するセンスピンに新しい電力管理設定が実装されています。これにより、全体的な電源管理が向上しています。 - 効率の微小な向上:
ATX 3.1のホールドアップ時間は16msとなり、ATX 3.0の17msから短縮されました。この変更により、電源ユニット(PSU)の効率がわずかに向上しています。
ATX3.1電源について
Corsair は、RMx シリーズ電源を ATX 3.1 規格に準拠するように更新し、最新の PC ビルドの電力効率と安定性を強化しました。これらの更新によりPSU はネイティブ ATX 12V-2x6 コネクタを備え、最新の PCIe 5.1 デバイスをサポートします。CORSAIRは、10年保証で静音性が高く高信頼性で知られており、RTX 5090 / 5080にも最適です。
2024モデルを購入するようにしてください。2024モデルならATX 3.1対応。2023モデルならATX 3.0です。
新たに2025年1月に新しいATX 3.1対応電源ユニット「RMe ATX 3.1シリーズ」を発表しました。
CP-9020297-JPとCP-9020271-JPの主な違いを以下の表にまとめました。
特徴 | CP-9020297-JP (RM1000e) | CP-9020271-JP (RM1000x) |
---|---|---|
シリーズ名 | RMe | RMx |
発売年 | 2025 | 2024 |
冷却ファン | 120mm | 140mm |
ファン軸受 | ライフルベアリング | 流体軸受 |
ファン調整 | Zero RPM Fan Mode | Zero RPM Fan Mode + 手動調整ダイヤル |
幅・奥行・高さ(mm) | 150 × 140 × 86 | 160 × 150 × 86 |
ATX規格 | ATX 3.1 | ATX 3.1 |
PCI Express対応 | 5.1 | 5.1 |
Cybenetics認証 | GOLD | GOLD |
モジュラー対応 | フル | フル |
重量 | 1.64kg | 3.12kg |
両モデルとも1000W出力のATX 3.1準拠電源ユニットですが、RM1000xモデル(CP-9020271-JP)はファンの手動調整機能が追加されており、より細かな騒音制御が可能です2。一方、RM1000eモデル(CP-9020297-JP)は奥行きが140mmとコンパクトな設計になっています